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次世代と共に未来を作る。

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次世代と共に未来を作る。

 私は、今年の四月から、手話者として、「ありがとうの種 手話でいきる子どものあ~とん塾」、通称「あ~とん塾」で働いている。あ~とん塾は0~18歳のろう児のためのコミュニティである。塾の中では手話が公用語として使われる。これは他の学習塾にない特徴だ。今は夏休みに入ったが、子供の対応にてんやわんやだ。けれどとても充実感を得ながら働くことができている。

 わたしの趣味は旅行だ。なぜかというと、『新しいものの発見』が大好きだからだ。これは、今の仕事の充実度にも結び付く。子どもが思いがけない気付きを共有してくれる度に、私も新しい発見をする。0~2歳の赤ちゃんが来るときには朝から昼まで一緒に遊ぶ。小学生が来るときは、3時から夕方5時くらいまで一緒に過ごす。長期休暇には中学生がやって来ることもある。現在は、夏休みのため、朝から夕方まで対応に明け暮れる毎日である。仕事の内容は子どもの対応だけでなく、事務作業や、子どものための企画作りなど多岐にわたる。業務は山ほどあるが、とても楽しい、というのが本音である。半年も経ってない若輩者であるが、子どもからいただく経験は“宝”だと思う。私は、子どもたちがこれからの世界や未来を作っていくと信じてる。あ~とん塾を通して、子どもたちと多くのことに共に挑戦し、子どもたちが自分らしく学んで遊んで話していけるような環境を作っていきたいと思う。それがこの時代に生まれたわたしの使命だと考えてる。

 子どもには、ろうに限らず、難聴者、尊敬できる聴者など、たくさんのロールモデルに出会って、夢を広げて自分の可能性に期待を持ってほしいと心から願う。この世界は聴者がメインとなる作品にあふれている。テレビや映画、子どもが好む漫画も、登場人物は聴者を前提にしている。その中で、ろうの子どもが、自分の未来像を結び付けるのは非常に難しいと思う。学生の時から疑問だったのだが、メディアでろうの登場人物が出る時は決まって必ず恋愛ドラマだった。それに違和感を常に感じていた。恋愛だけでなく、学業や仕事に励む、ふつうに生きるろうの姿をもっと大きく映し出してほしい。そうすれば、ろうの子どもの目に未来の希望の光がきらきら輝くと思う。まず、恥ずかしいけれど、自分自身が彼らのロールモデルになれるように日々地道に精進中である。

 わたしのことを語ろう。生まれたときから聞こえなかった。補聴器を使いながら生活していた。今では仕事のときだけ補聴器を外しているが、それまでは補聴器は日常的につけていた。わたしは高校まで難聴者だった。大学に入って、ろうというアイデンティティ獲得の芽が生じたが、ろうか、難聴者かというと決まっておらず、どちらでも良いという感覚である。どうしてそういう心境に至れたかというと、慣れと繰り返しによって、無理のない自然な自分のありようを知れたからだ。そして現職場のあ~とん塾では、完全ろう当事者として手話を活用している。家で親と話す時には口話と音声で話している。これが自分にとって無理のない形である。

 わたしは、聴覚障がい当事者として、聴こえに関していろいろな体験をしてきた。プラスの面では、マジョリティでなくマイノリティだから体験できたことが大きい。手話で話せる、だから繋がれた人もいる。マイナスの面では、情報量の格差である。これは現時点ではIT機器のおかげで多少壁は低くなったが、依然不十分だと思う。

 高校生の悩んでいた自分に伝えたいことがあるとするならば、まずは自分の興味のあることや好きなことを見つけ、それをもっと学ぶために大学や専門学校という進路を選択肢に入れて欲しい。就職という進路選択もあるが、新たな世界を知り、たくさんの人と出会うために、自分探しのために大学や専門学校に行く選択肢もある。それを諦めないで欲しい。もし、興味のあることや好きなことが見つからなくても焦ることはない。大学や専門学校、あるいはそれ以外の道で新しい自分に出会えることもある。進路選択の過程のなかで、聞こえない・聞こえにくい自分と向き合い、悩んできた時間は決して無駄にならず、これからにつながるはず。

「自分とは何でどこに向かうべきか、問い続けてみれば見えてくる。」そう信じて、新たな道を切り拓いていってほしい。

 最後に、手話の知らない聴者に伝えたいことがあるとするならば、もしろう者や聴覚障がい者が近くにいたら、まず相手を理解することから始めてほしい。例えば、好きなことは何か、趣味は何か、と興味を持って相手を知ることからで十分だ・その一歩が、共生社会の一歩を実現する鍵になると思う。コミュニケーション方法は何しも手話にこだわる必要はない。筆談や音声を文字化するアプリもある。それを活用しながら、相手を知ること、理解することを諦めないでほしい。

石川さと
 ろう当事者&手話者として活動している。本業は、ろう児のための居場所【手話で生きる子どものあ~とん塾】で児童指導員をしている。その傍ら、NPO法人インフォメーションギャップバスターでは、コミュニケーションディレクターとして、電話リレーサービスやコミュニケーションバリアに関する啓発活動や企画運営に携わっている。

中川 夜
中川 夜

1991年生まれ。ろう者ライター。聴覚と精神の重複障害者。
恩人から対話による深い安心を頂いたことで生きやすさを覚え、書物でなく、人との間の言葉のやり取りで、安心の循環を生み出す方法に興味を持つ。シナリオセンターに通いつつ、現在は任意団体デフシル-DEAF SHIRU-で、絵本製作プロジェクトに参戦中。また、聴覚障がいの多様性を発信中。

日本手話/日本語字幕付

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